「ジムに入会して、一生懸命プランクや腹筋運動をしているのに、一向にぽっこりお腹が解消されない」
「腰痛を根本的に治すために体幹トレーニングを始めたはずが、かえって腰や肩が痛くなってしまった」
PRIVATE GYM HOOPには、このようなお悩みを抱えたお客様が数多くいらっしゃいます。
真面目で、健康への意識が高い方ほど、YouTubeや雑誌を見てハードなトレーニングに励み、そして壁にぶつかってしまう傾向があります。
実は、どれだけハードな筋力トレーニングを行っても、あるいはどれだけ高価な最新マシンを使っても、人間の最も基本的で、かつ無意識の動作である「呼吸」の土台が崩れていれば、その効果は半減するどころか、怪我のリスクを大幅に高めてしまいます。
HOOPでは、お客様の身体を評価する際、筋肉の強さや関節の柔らかさを見る前に、まずは「どのように呼吸をしているか」を徹底的に確認します。
今回は、最新のアスレティックトレーニングやスポーツ医学の論文1-3)の知見をもとに、なぜ呼吸がそれほどまでに重要なのか、そしてそれが皆さんの姿勢や痛みにどう直結しているのかを紐解いていきます。
なぜ、HOOPではジムのトレーニングで「呼吸」を最重要視するのか?

「呼吸なんて、生きていれば誰でも自然にしているものでは?」と思うかもしれません。
もちろん、生命維持のために呼吸は不可欠です。 しかし近年、アスレティックトレーニングや腰部のリハビリテーションの分野において、呼吸がもたらす「体幹機能への貢献」が急速に注目を集めています。
私たちが日常的に行っている呼吸は、1日に約2万回から2万5千回に及びます。
もし、この2万回の動作が「間違ったフォーム(筋肉の偏った使い方)」で行われていたとしたらどうなるでしょうか。
スクワットを間違ったフォームで2万回やれば確実に膝や腰を壊すように、呼吸も1回1回の負荷は小さくても、塵も積もれば山となり、身体の特定の部位に強烈なストレスを与え続けます。
呼吸の機能不全(Dysfunctional Breathing:DB)は、単なる「息苦しさ」にとどまりません。
研究者のロサルバ・コートニー博士は、呼吸の機能不全を
- 身体運動的(筋肉や関節の動きの異常)
- 生化学的(血中の酸素や二酸化炭素のバランスの崩れ)
- 精神心理学的(ストレスや感情の乱れ
という、3つの多次元的な側面から捉えることを提唱2)しています。
これら3つの側面は密接に絡み合っています。
例えば、ストレス(精神心理学)がかかると呼吸が浅く早くなり、血中の二酸化炭素濃度が変化し(生化学)、その結果として首や肩の筋肉が過緊張を起こす(身体運動的)、といった具合です。
つまり、呼吸が崩れることは、姿勢が悪くなるだけでなく、疲れやすくなったり、メンタルが不安定になったりすることにも直結しているのです。
だからこそ、HOOPでは身体を根本から変えるための「最も効果的な入り口」として、呼吸への介入を最優先しています。
横隔膜の知られざる「2つの顔」:主呼吸筋であり、最強の体幹安定筋

呼吸の主役となる筋肉、それが「横隔膜」です。
焼肉でいうところの「ハラミ」にあたる部分ですが、この横隔膜にはあまり知られていない、非常に重要な「2つの顔」があります。
1つ目は、「主呼吸筋」としての顔です。
そして2つ目が、「体幹安定筋」としての顔です。
腰部や体幹を安定させるためには、身体の深層にあるインナーマッスルが重要です。
具体的には、お腹の周りをコルセットのように包む「腹横筋」と「内腹斜筋」、背骨を後ろから支える「多裂筋」、骨盤の底をハンモックのように支える「骨盤底筋群」、そして屋根の役割を果たす「横隔膜」です。
これらが立体的(上方、側方、下方)に連動し、お腹の中の圧力(腹腔内圧)を高めることで、初めて脊柱(背骨)に強固な安定性が生まれます。
横隔膜は、呼吸をするための単なる「ポンプ」でありながら、同時に体幹の一部として姿勢を支えるという、極めて高度なマルチタスクをこなしている筋肉なのです。
研究者のWalldenは、「横隔膜ほど構造的にも体の中心にあり、身体的、生化学的、そして精神的にも中心の役割を果たしている筋肉はない3)」と述べています。
主呼吸筋としての役割だけでなく、姿勢の維持、背骨への負担軽減(減圧)、体液(血液やリンパ)の循環、内臓機能の安定、感情(情動)のコントロール、さらには消化活動にまで関わっています。
一つの筋肉がこれほど多岐にわたる役割を担っているのは、まさに人体の驚異と言えます。
なぜ「腰」をもんでも治らない?横隔膜と腰痛の意外なつながり

では、なぜ呼吸の筋肉であるはずの横隔膜が、腰痛や姿勢の崩れを引き起こすのでしょうか。
その理由は、体の中の「筋肉のネットワーク」にあります。
横隔膜は胸のあたりにあると思われがちですが、実はその一部は「腰の骨(腰椎)」に直接くっついています。
さらに重要なのは、横隔膜が「全身を包むボディスーツ」のような役割をする「筋膜」を通じて、腰痛の原因になりやすい他の筋肉(脚を上げるための大腰筋や、腰の横にある腰方形筋など)とべったり繋がっているという事実です。
これは、テントの布とヒモのような関係です。
どこか一箇所が引っ張られれば、全体の形が歪んでしまいます。
例えば、長時間のデスクワーク。
座りっぱなしの姿勢が続くと、脚の付け根の筋肉が硬く縮こまります。
すると、ボディスーツ(筋膜)で繋がっている横隔膜も下へギュッと引っ張られ、スムーズに動けなくなってしまいます。
逆に、ストレスなどで呼吸が浅くなり横隔膜の動きが悪くなると、今度はそれが腰回りの筋肉を引っ張り、ガチガチに固まらせて慢性的な腰痛を引き起こします。
「腰が痛いから腰をマッサージする」「姿勢が悪いから背筋を鍛える」
といったその場しのぎのケアでは根本的に解決しない理由が、この「筋肉のネットワーク」にあるのです。
正しい呼吸のメカニズム:息を「吸う」のではなく、最後まで「吐き切る」こと

横隔膜は、胸の空間(胸腔)とお腹の空間(腹腔)を隔てる、ドーム状をした筋肉です。
正しい呼吸のメカニズムは以下の通りです。
・息を吸う時: 横隔膜が筋肉が縮む働きをして下へ下降し、平らになります。
これにより胸腔の容積が広がり、圧力が下がることで、外の空気が肺胞の中に引き込まれます。
・息を吐く時: 横隔膜が力を発揮しながら伸びていく働きをして、元のドーム状へと上昇していきます。
これにより肺が下から圧迫され、空気が押し出されることで息が吐けます。
安静時の呼吸の仕事量のうち、実に70〜80%をこの横隔膜が担っているとされています。
問題は、この精巧なポンプ機能が破綻した時です。
現代人の多くは、息を最後まで「吐き切る」ことができていません。
息を吐き切れないということは、横隔膜が上に上がりきらず、下がったまま(平らなまま)固まってしまうということです。
すると、肺には常に古い空気が残った状態(過膨張)になります。
横隔膜というメインエンジンが使えなくなった身体は、それでも酸素を取り込むために、首や肩の筋肉(斜角筋、胸鎖乳突筋など)、あるいは胸の筋肉といった「副呼吸筋」を過剰に使い始めます。
本来なら緊急時や激しい運動時にしか使わないこれらの筋肉を使って、肩をすくめるようにして無理やり呼吸を2万回繰り返すのです。
これが、何をしても治らない慢性的な肩こりや首の痛みの正体です。
つまり、肩こりを根本から治すためには、肩を強く揉みほぐすことではなく、「横隔膜を使って、正しく息を吐き切れるポジションを取り戻す」ことが最も効果的なアプローチなのです。
まずは自分の身体をリセットし、土台を作ろう

ここまでの話で、横隔膜がいかに重要であり、全身のコンディションに影響を与えているかお分かりいただけたかと思います。
HOOPのパーソナルトレーニングでは、体の状況を見る前にいきなりバーベルを担がせたり、体幹トレーニングをしたりしません。
まずは、あなたの呼吸が正しく機能しているか、横隔膜が本来の可動域とドーム状のポジションを取り戻せているかを丁寧にチェックします。
- 仰向けに寝て呼吸をした際、肋骨が開いたまま腰が大きく反っていないか?
- 息を吸うときに、肩がすくんで首に力が入っていないか?
- 風船を膨らませるように、最後まで息を「ふーーっ」と吐き切ることができるか?
これらを評価し、呼吸を取り入れたエクササイズを必要に応じて必要なタイミングで行っております。
横隔膜を正常なポジションに戻し、内腹斜筋や腹横筋といったインナーマッスルのスイッチを「呼吸によって」入れることで、その後の筋力トレーニングの効果は劇的に変わります。
身体の土台である「呼吸」を整えることこそが、最も安全で、最も効果の高い最強の体幹トレーニングなのです。
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MR.HOOPのワンポイント・アドバイス

やあ!みんな、調子はどう?MR.HOOPだよ!
ここまで横隔膜の難しい話が続いたけど、みんな画面見ながら息止まってない?(笑)
片貝トレーナーが言ってた『精神心理学的な側面』ってやつ、僕もすっごくわかるんだよね。
テスト前とか、スマホの通知が鳴りやまない時とかさ、気付いたら呼吸がめちゃくちゃ浅くなってるもん。
脳が『ヤバい!』って焦って、身体が自動的に戦闘モードになっちゃうんだって。
いくらジムで完璧な呼吸フォームを作っても、家に帰ってからスマホ見ながら猫背で浅い呼吸してたらもったいないよね!
だからさ、寝る前の5分間でいいから、スマホを置いてベッドの上で思いっきり息を『ふーーっ』て吐き切ってみてよ。
副交感神経のスイッチが入って、心がスッと軽くなるのがわかるはずさ。
トレーニングも最高に大事だけど、日常の中でリラックスして、大きな声で笑うこと。
それも立派な『横隔膜のトレーニング』だよね! さあ、肩の力を抜いて、今日も良い一日にしよう!
おわりに
身体を変えるためには、ジムでがむしゃらに汗をかく時間も時には必要です。
しかし、それ以上に「自分の身体の構造がどうなっていて、どう動いているか」に気づき、基礎を整える時間が、痛みのない一生の財産になります。
呼吸は、自らの意思で自律神経に直接アクセスできる、ほぼ唯一の手段です。
もし今、あなたが慢性的な痛みや、トレーニングの停滞、なんとなく抜けない疲労感に悩んでいるなら、一度ご自身の「呼吸」に目を向けてみてください。
HOOPでは、専門的な知見に基づき、あなたの身体の根本的な見直しを全力でサポートいたします。
ぜひ一度、HOOPのセッションで「本当の呼吸」を体感しにいらしてください。
引用文献・参考文献
1)大貫 崇 (2019)『呼吸機能と体幹、横隔膜の関係性について』日本アスレティックトレーニング学会誌 第5巻 第1号
2)Courtney, R. (2009) “The functions of breathing and its dysfunctions and their relationship to breathing therapy.” International Journal of Osteopathic Medicine, 12(3). (doi:10.1016/j.ijosm.2009.04.002)
3)Wallden, M. (2017) “The diaphragm More than an inspired design.” Journal of Bodywork & Movement Therapies, (2). (doi:10.1016/j.jbmt.2017.03.013)