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ヒップロックとは?陸上短距離での効果とスタート・加速で骨盤を活かす方法

「スタートで地面を押しているはずなのに、一歩目が伸びない」
「100mの後半になると、腰が落ちて失速してしまう」
「ヒップロックという言葉は聞くけれど、結局なにに効くのかわからない」

そんな悩みを抱えている短距離の選手は、とても多いです。
脚の筋力は十分に鍛えているのに、走りに結びつかない。
その原因が、脚そのものではなく骨盤まわりの使い方にあるケースは少なくありません。
この記事では、陸上短距離で話題になるヒップロックの意味と効果、そして身につけるための考え方を、順番に整理していきます。
読み終えるころには、自分の走りのどこを見直せばいいのかがはっきりするはずです。

ヒップロックとは?陸上短距離で注目される骨盤の動き

トラックを走る短距離選手

ヒップロックとは、片脚で立っているときに、浮いている側の骨盤が落ちないようにする動きのことです。1)
走るという動作は、片脚で接地して、次に反対の脚で接地して、という片脚支持のくり返しです。
接地している脚の上で骨盤がぐらつけば、せっかく地面を押した力が身体の中で逃げてしまいます。
ヒップロックは、その力を逃がさずに前へ伝えるための土台になる動きです。

「ロック」は身体を固めることではない

名前に「ロック」とついているので、骨盤をガチガチに固めることだと思われがちです。
でも実際は違います。
片脚で身体を支える場面で、骨盤が持ち上がる動きと、腰が横に曲がる動きがうまく協調して起こり、必要な瞬間にぐらつかず支えとして働いている状態をさします。2)
固めすぎると脚の動く範囲が狭くなって、かえってスピードが落ちます。3)
大切なのは、ぐらつかないことと、しなやかに動けることを両立させることです。

働いている筋肉は「お尻の横」と「脇腹」

骨盤を引き上げるときに主役になるのは、接地している側の中殿筋(お尻の横にある筋肉)と、反対側の腹斜筋(脇腹の筋肉)です。1)
さらに、腰の奥にある腰方形筋も加わって、一緒に働きます。2)
この3つが、脚で生まれた力を身体の中心へ運ぶ「橋」のような役割をしています。
橋のどこか1か所がぐらつけば、橋全体が揺れてしまいますよね。
筋肉を1つずつ鍛えるだけでなく、3つがつながって働いているかを見ることが大切です。

ヒップロックが短距離のスタートと加速に効く理由

スタートの姿勢をとる選手

ヒップロックの効果がいちばん表れやすいのは、スタートから加速局面です。
スプリントの加速では、能力の高い選手ほど、最初の一歩目、二歩目で脚だけでなく骨盤や背骨も大きく動かしています。4)
脚だけで地面を蹴っているのではなく、骨盤から体幹まで身体全体を使って地面を押しているのです。

骨盤が落ちると、地面を押す力が逃げる

接地したときに腰が落ちてしまうと、地面を押す力が弱くなり、動きが小さくなります。1)
股関節がしっかり伸びきらず、走りが「くの字」に見えたり、ガニ股のようになったりするのも、この骨盤の落ち込みと関係しています。1)
スタートダッシュで力が伝わらないと感じる選手は、脚の力が足りないのではなく、骨盤で力が逃げている可能性があります。
骨盤が水平に保たれると、お尻の筋肉の力を発揮しやすくなり、腹斜筋による骨盤の回旋も起こりやすくなります。1)
その結果、一歩ごとに強い力を地面へ伝えられるようになります。

ストライドは「脚力」だけで決まらない

後半の失速やストライドの縮みも、骨盤の安定と深く関わっています。
骨盤と腰椎は上半身と下半身をつなぐ走りの支点で、ここが不安定だと推進力が逃げてストライドが縮み、スピードを維持しにくくなります。5)
逆に安定性が高まると、股関節がしっかり伸びて蹴り出しが強まり、接地のたびに体幹が崩れにくくなります。5)
力で無理に歩幅を広げるのではなく、自然にストライドが伸びていく。
ヒップロックが目指すのは、そんな効率のいい走りです。

骨盤のぐらつきは、ケガの入り口にもなる

遊脚側の骨盤が支持脚に対して下がるパターンは、支持脚の臀筋群が正しく働いていないサインです。4)
これをくり返すと、腰や膝、足首への負担が積み重なり、ケガにつながるおそれがあります。6)
ヒップロックは、速く走るための技術であると同時に、競技を長く続けるための身体づくりでもあります。

研究からわかる、短距離走と体幹・股関節の関係

グラウンドで走る練習をする選手

ここからは、短距離走と身体の使い方について、研究で見えてきたことをお伝えします。

体幹の深い筋肉が、走りの速さと結びついている

大学の短距離選手を対象にした研究では、体幹の深いところにある筋肉の厚みが、100mのタイムと関係していました。7)
とくに腹横筋(お腹をコルセットのように包む筋肉)が厚い選手ほど、速いタイムを出していました。
ただし、ここには面白い続きがあります。
厚みが増えるほどタイムは良くなるものの、あるところから先は頭打ちになるのです。
研究者たちは、体幹の筋肉をただ大きくすることを目指すより、身体の中で上手に働かせることを重視した方がいいと考えています。
ヒップロックが「筋肉の量」ではなく「連動して働くかどうか」を大切にする理由も、ここにあります。

股関節の筋肉は、局面ごとに役割が違う

短距離選手の股関節まわりの筋肉を調べた研究では、最高速度で走っているときの速さと関係していたのは、ハムストリングス(もも裏)の中でも半腱様筋という筋肉でした。8)
この筋肉が大きい選手ほど、接地している間に身体が進む距離が長く、歩幅が大きく、速く走れていたのです。
お尻の大きな筋肉だけを鍛えれば速くなる、という単純な話ではないことがわかります。
走りの局面によって、働く筋肉の主役は入れ替わります。
だからこそ、骨盤を安定させる役割と、脚を前へ運ぶ役割を、分けて考えることが大切です。

筋力だけでは骨盤の安定は決まらない

もうひとつ、大事な研究があります。
中殿筋の筋力と、走っているときの骨盤の落ち込みの関係を調べた研究では、動かさない状態で測った中殿筋の筋力は、骨盤の落ち込みの大きさと関係していませんでした。9)
つまり、お尻の横の筋肉が強いだけでは、走りの中で骨盤が安定するとは限らないということです。
研究者たちは、静止して測る筋力ではなく、動きの中で使える筋力を見ることが大切だと指摘しています。
ヒップロックが「動きの中で表現される安定性」と言われるのは、このためです。5)
筋トレで強くなることと、走りの中で使えることは、別の話です。

ヒップロックを身につけるトレーニングと注意点

では、どうやってヒップロックを身につけるのか。
代表的な練習を紹介します。

ヒップロックの効果が出やすい選手の特徴

骨盤の左右のブレが大きい選手や、接地した力が横に逃げやすい選手は、ヒップロックの効果を感じやすいです。10)
体幹や股関節にある程度の強さがあることも、前提になります。10)
たとえば、スタートで一歩目が小さくなる選手や、骨盤の幅が広くて接地のたびに腰が沈みやすい選手は、まず骨盤の落ち込みを疑ってみてください。1)
動画を撮って後ろから見ると、接地のたびに片側の腰が下がっていることに気づける場合があります。
自分のクセを知ることが、改善の最初の一歩です。
できていないと気づけたこと自体が、すでに前進だと考えてください。

基本は「片脚で支えて、骨盤をコントロールする」

まず取り組みやすいのが、片脚で立って、浮かせた側の骨盤を上げ下げする練習です。6)
大事なのは、骨盤を高く上げることではありません。
支えている脚側のお尻でしっかり身体を支えながら、骨盤をコントロールすることです。6)
支えている側のお尻に力が入る感覚があり、体幹や骨盤を安定させたまま動かせていれば、いい状態です。
ほかにも、足首にバンドをつけて横に歩くサイドウォークや、壁を使って骨盤が上がりにくい状態をつくるウォールヒップロックがあります。3)
片脚ブリッジ、片脚ヒップスラスト、プランク、デッドバグといった種目も、骨盤と腰椎を安定させる土台づくりに役立ちます。5)

こんな落とし穴に気をつけてください

ヒップロックは、意識するだけで身につくものではありません。10)
筋力、柔軟性、そして動かすタイミングがそろって、はじめて走りの中で使えるようになります。10)
中殿筋や体幹が弱いままだと、走っている最中に骨盤の位置を保てません。
反対に、固めることばかり意識すると、脚の動きが小さくなってスピードが落ちます。
接地の位置や腕振りなど、ほかの課題が残っているときも、効果は出にくくなります。10)
まずは50〜60%ほどのスピードで感覚をつかみ、動画で骨盤が水平に保たれているかを確認するのがおすすめです。10)
ヒップロックは、基礎の走力と土台の上にのせる「仕上げ」の技術です。
股関節と体幹の土台づくりが先で、そのあとに走りの中で使えるようにしていく。
この順番を守ることが、いちばんの近道になります。

PRIVATE GYM HOOPでのアプローチ

骨盤の動きは、自分では見えにくいところです。
「できているつもり」でも、実際の走りでは腰が落ちている選手を、これまでたくさん見てきました。
PRIVATE GYM HOOPでは、プロサッカーチームのリハビリ・ケア・パフォーマンストレーニングに携わってきた理学療法士の資格を持つトレーナーが、一人ひとりの動きを確認します。
片脚で立ったときの骨盤のぐらつき、股関節の動き、体幹のつながりを丁寧に見て、どこで力が逃げているのかを見つけます。
そのうえで、呼吸を整えた状態からプレーに必要な身体を、段階を追って適切につくっていきます。
走りの中で骨盤が使えるようになる身体を、一緒につくっていきましょう。

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MR.HOOPのワンポイント・アドバイス

MR.HOOP

やあ!みんな、調子はどう?MR.HOOPだよ!
走りが伸びないと、つい「もっと脚を強くしなきゃ」って思っちゃうよね!
でも、骨盤がぐらついていたら、どんなに強い脚でも力はもったいなく逃げてしまうはずさ。
毎日の歯みがきのあいだに、片脚立ちで骨盤をぐらつかせない練習をしてみるのはどうかな。
うまくいかない日があっても、焦らなくて大丈夫だよね!
小さな積み重ねが、本番の一歩目に必ず出てくるはずさ。

おわりに

ヒップロックは、片脚で立ったときに骨盤が落ちないようにする動きで、陸上短距離のスタートや加速、ストライドの維持に深く関わっています。
お尻の横の中殿筋、反対側の脇腹の腹斜筋、腰の奥の腰方形筋が連動して働くことで、地面を押した力が逃げずに前へ伝わります。
そして、強い筋肉をつくるだけでは足りません。
動きの中で使えること、固めすぎないこと、基礎の土台の上に積み上げること。
この3つが、ヒップロックを走りに活かすポイントです。
まずは片脚立ちで、自分の骨盤がどう動いているかを確かめるところから始めてみてください。
自分の走りに合った進め方を知りたいときは、いつでも相談してください。

引用文献

1)陸上競技『心・技・体』の教科書「ヒップロック」 https://sports-educate.com/%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF/
2)HOOP前橋 ジャーナル「ヒップロックとは?スプリントの初速を高める骨盤の動きと、片脚で安定する身体のつくり方」 https://hoopmaebashi.com/journal/183/
3)AFRO RUNNING「どうして「横」の筋力なのか?「中臀筋・腹斜筋」長く・楽に走るためのヒップロック(エクササイズ付き)」 https://afro-running.jp/627/
4)note「♯75 ヒップロック」(菊池啓太/サッカーフィジカルコーチ) https://note.com/keitaqol/n/n440bbe274754
5)パーソナルジム ウィスポ「スプリント中の骨盤・腰椎の安定性とストライド長の関係」 https://www.kure-wisp-conditioning.com/kure-wisp-conditioning-376/
6)note「♯75 ヒップロック」(サッカーフィジカルコーチによる解説) https://note.com/keitaqol/n/n440bbe274754
7)Fujita S, et al. A 100-m Sprint Time Is Associated With Deep Trunk Muscle Thickness in Collegiate Male Sprinters. Frontiers in Sports and Active Living. 2019. https://www.frontiersin.org/journals/sports-and-active-living/articles/10.3389/fspor.2019.00032/full
8)Takahashi K, et al. Muscle size of individual hip extensors in sprint runners: Its relation to spatiotemporal variables and sprint velocity during maximal velocity sprinting. PLoS ONE. 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8021153/
9)Burnet EN, Pidcoe PE. Isometric Gluteus Medius Muscle Torque and Frontal Plane Pelvic Motion During Running. Journal of Sports Science and Medicine. 2009. https://jssm.org/jssm-08-284.xml-Fulltext
10)note(MORIトレ)「「ヒップロック」で走りが変わる?方法・効果・落とし穴を徹底解説」 https://note.com/taikukateikyousi/n/n17d37d18caee